2014年6月24日火曜日

国民健康保険は選んで入ろう

国民健康保険は選んで入ろう


 アニメーション業界で働くみなさん、 少しでも保険税額をおさえるため、国民健康保険は比較検討して一番お得な保険を選びましょう。保険税額が減らせたら、その分収入が増えたことと同じ、という考え方をしてみてはどうですか。

 幸い、アニメーションは映像産業なので、いくつかの有利な国民健康保険を選ぶことができるのです。知らなかった?

 誰にどの保険がお得になるか、記憶でざっくり表にしました。正確を期してはいません。また保険組合同士で重なってくる部分もありますよ。

 でもこのなかで、だいたいの目星をつけたら
http://www.janica.jp/bunbi/kokuho0207.html ここに「保険料の試算プログラム」がありますから、試算して確認をしてください。

(※課税所得金額というのは、総所得から必要経費や保険料を引いた残りの金額)


 文芸美術国民健康保険組合は、団体加入であることが条件なのが少々めんどうです。そしてその名のとおり文筆業と芸術家しか入れません。人によっては夢のようにお得な保険なのですが、アニメーション産業で加入できるのは実質アニメーター、演出、背景、CGくらいです。これは文芸美術国民健康保険組合が審査して決めていることなので、どうしようもありません。
 なお、職業を偽って加入すると行政指導が厳しくなっているおり、あとがコワイです。
 ただし、何度でも入ったりやめたりすることが出来るのは利点です。

 東京芸能人国民健康保険組合は、アニメーション産業の人なら経理、総務等の専門職を除き、ほぼ入れますし、個人加入なのが気楽ですね。
 そしてサービスでくれるお薬セットがなにげにお得。1年間、お薬を買わなくて済む感じ(^^) ただし、一度抜けたら二度と入れないので注意してね。


 どれも○○国民健康保険という名称でしょう。つまり基本的にこれらも市役所で入る国民健康保険と同じ国民健康保険なのです。みな昔々、特例で優遇されて作られた国民健康保険なんですけど、いまさらつぶせないという感じでいまも残っています。
 ま、合法的に利用できるものは活用しましょう。


  資料によると、健康保険税を滞納して保険証を持っていない人は、病気になっても病院に行かない率が高いです。そうこうするうちに、病気を悪化させて死に至ることもすくないないそうですよ。

 会社の社会保険に入れたら一番いいのですが、ほとんどのアニメーターには無理な話。だから国民健康保険には入っておいたほうがよいと思う。
 でも健康保険税、以外に高額ですよね。


 それでも1回滞納してしまうと、収入の少ないアニメーターには次がきつい。滞納し続けると2年間分まとめて払わされますが、現実問題としてこれができる人は滞納など最初からしないでしょう。
 しかも滞納金の加算税は年14.6%で、これはサラ金とたいして変わらない利率なので、銀行預金の利率が0.0いくつ、という時代においてはけっこう恐ろしい利率ですΣ( ̄ロ ̄lll)


 だから、新人アニメーターはしばらくのあいだ、親の保険に入ったままでいてください。それが一番安全です。


 40歳代、50歳代になり、けっこう所得もあるはずなのに、国民健康保険に入らない人もいます。するとやはり病院には行きづらいようで、病気をこじらる結果になったりします。
 また業界では高額所得者の部類なのに延々と滞納しつづけている人もいます。この年代、収入の人になると自分の意思でしていることだから、自己責任かなあ(^^;) 

 あと、非常にめずらしい考え方のアニメーターもいて、50歳代をすぎていますが、一度も健康保険税を払ったことがないのだそうです。でも国民年金はきちんと払っているの。
 普通のパターンと逆ですね。本人曰く
「年金は必要だ。だけど私は病気しないから健康保険はいらないんだ」
・・・だって。
 いままで運がよかっただけだと思うけどナ。


 人間誰でも、どんな病気になるかわからないと思う。国民健康保険には入りましょう。国民健康保険に入ってさえいれば、大手術、入院となっても8万数千円の支払い限度額が決まっており、たとえ200万円の医療費がかかったとしても、190万円以上は返ってきます。
 最初に200万円が払えないときは、そのように申請すれば最初から払わなくて大丈夫。

 日本の国民皆保険制度って優しいなあ。







2014年6月19日木曜日

消費税が上がって原画料は上がったか?

消費税が上がって原画料は上がったか?

2014年(平成26年)4月1日
 消費税が5%から8%に上がりました。

 あなたが4月1日前後に、同じ作品の原画を描いていたら、自動的に128円ていど原画料が上がったはずです。1カット4,500円の作品ですと、計算式は下のようになります。

(原画1カット)4,500÷105(原画料+消費税5%)×108(原画料+消費税8%)=4,628円。

 みなさん、原画料上がりましたよね? え、上がっていない? おかしいね。スーパーでもコンビニでも消費税分値上がりしているのにね。

「消費税が上がったのに、どうして原画料は上がらないんだろう」って、少し考えてみたほうがいいと思うよん。なぜなら「どうして?」と、疑問を持たない限り、原画料に消費税率が反映されることは永遠にないからなんです。


 だいぶさかのぼりますが、アニメーション業界での消費税についてお話しします。めんどうな部分は割愛したので、別にむずかしくないです。読んでね(^^)/

 アニメーション業界では消費税が導入された当初から、個人からの請求には消費税を払わず、その分を会社の利益にする方式がなんとなくスタンダードになっています。
 最初の消費税は3%でしたから、もともと収入の少ないフリーのアニメーターにとってそれほど気になる金額ではなかったということもあったのでしょうね。

「ギャラに消費税を付けてほしいのねん」
 と、あのときアニメーター側から言わなかったことが、今現在、そして今後、消費税率が上れば上がっただけ、「あとの祭」問題になっていくのです。
 次回の消費税増税で消費税はついに10%にまで上がります。そうすると、ある程度の収入があるアニメーターにとって、消費税分をもらえるかもらえないかは、気にならないといってはいられない金額になります。月収が50万円なのか55万円になるのかは、けっこう大きな違いでしょう?

  アニメーション業界の制作部、経理は長い間、消費税について次のような立場を取り、説明をしてきました。
 ・制作会社は、下請けの株式会社や有限会社の作画スタジオ等には消費税を払う。(神村メモ ※これは下請け会社が法人税法で経理をするため、消費税を払わないわけにはいかないからです)
 ・しかし個人に消費税を払う必要はない。

 ・・・とね。

 個人に消費税を払う必要はない、というのは間違いです。消費税法のどこにそんなことが書いてあるのか、その根拠を明確にしてもらいたい(^^;)
 税法上は法人であれ、個人であれ、ギャラに消費税を加えて支払いをしなければなりません。
  制作会社の経理がその程度のことを知らないはずはありません。ではなぜ、個人の請求には消費税を付けてくれないのかといえば、それは当事者であるアニメーターたちから、なんの文句も言われないからです。
「消費税を付けるのは会社からの請求だけなんだよ。個人は該当しないよ」
 と制作や経理に説明され、
「あ、そうなんですか」
 と鵜呑みにしてしまうアニメーターたちの不勉強さにも、ある程度の問題はあるでしょう。
 そうはいっても!

 税法に詳しいはずの経営者や経理が、「相手がくれと言わない金を、わざわざ払ってやる必要はないよね」と思っているとしたら、それはいささか情けない、というか、せこいのではないですか。
 とはいえ、消費税導入当初から、個人への支払いに、黙っていても消費税分を上乗せして支払っていたシンエイ動画のような例もあることはあった。

 ちなみにアニメーション業界以外で仕事をしてみると、個人への支払いに消費税を外税で付けてくるのが社会の常識だとわかります。雑誌にイラストを描いたり、イベントで講師をした場合などですね。
 
 アニメーション業界って非常識なのですよ。

 消費税が導入された時、いずれ3%の税率は徐々に上がり、イギリス、フランスのように15%、20%となっていくであろうことは、誰もがわかってはいたのだった。わたしも当然そうなると思った。
 ということは、今は3%なので原画料にそれほどの差は出ないが、これが仮に10%になったなら、年収100万円と110万円では大きな違いが生ずるなァ、と考えた。
「消費税分はちゃんともらわないといけないな」
 と、わたしはそのとき思ったんである。だからわたしは、請求書には必ず外税で消費税を加えることにした。すると請求したままの金額を振り込んでくる会社もあった。まれにね(笑)
 しかし、ほとんどの会社は、請求書を出した本人になんの連絡もないまま、当然のように消費税分を引いた金額を振り込んで来たんだナァ、これが。
 請求書の金額より少ない金額に変えて振り込みをするなんて、常識で考えたらあり得ないでしょ、あなた。普通なら絶対に問題になりますよね。アニメーター、なめられすぎですよ。

 わたしの場合、税務署にいろいろ教わった上で、外税の消費税額を加えた請求書を提出しています。税務署の説明および対応は人により様々で
「消費税を払わないのは税法上の違反行為です。会社名を教えて下さい。経理部に行政指導します」
  という方や
「残念ながらそこは力関係になるでしょうね。あとで消費税分は内税だと言われるケースもあります。1000円でしていた仕事が、消費税が上がってもおなじ1000円のままというのは、実質的に一方的な賃下げをしてきているということです。商道徳的にも、税法的にも問題のある行為だと思います。しかし、それでも仕事をもらいたい、という状況が存在することも確かです」
 と、現実的な説明をしてくれる方もいらした。

  つまるところ、アニメーター側がどのような対応を取るかは、自分次第だということですね。

 さて、消費税分をスルーされたわたしは、担当プロデューサーや経理に電話して
「最初に内税と聞いていないから、消費税分がほしいなー。収入が安定しないアニメーターにとって、これは大きな金額なのよん」
とお願いした。するとこのとき複数の会社が似たような説明をしたのだが、
「個人の場合、2,000万円以上の収入がある人にだけ消費税を払うと決まっている。2,000万円以上の収入があることを証明する文書を提出したら、消費税を払うよ」
・・・だって。

 あのね、そのような決まりは存在しませんから(^^;) いったい誰がどこで、そんなことを決めたのよ、って感じ。
 
 でもその説明は、論理的には「原画料の消費税は外税です」と認めていることになるのよね。消費税は、収入額に関係なく払わなければなりません。というより、アニメーターなんて収入少ないんですから、消費税分くらい払ってあげてほしいのことよ。

「税務署はそんなこと言っていませんでした」と何度、各社の経理に教えてあげたことか。
「やーね、ホントは知っているくせに」
 なんて、決して言いませんでしたよ。わたしの目的は消費税分を正当にいただくことであって、経理の揚げ足を取ることじゃありませんからね。
 そのようにしてわたしは制作会社に交渉し、消費税分をほとんどの会社からもらっていました。「特別に払うから、他の人には言わないでね」といった会社もありました。

「わたしは消費税分、もらっているよ。言えばくれる、言わない人にはくれない」
 だから、みんなもらえばいいのに、とアニメーターたちにも勧めました。でも、皆さん、なかなか動かない。たしかにめんどうなので気持ちはわかるのだが、前例を作らないとなにも変わらないのが世の中だ。

 これを読んでいるアニメーターたちのみなさん、誰か消費税をもらってみませんか。前例は作っておきましたので(^^)

  最初の話に戻りますが、消費税が5%から8%に上がったまさにその時、同じテレビシリーズを続けていて、1カットの原画料が変わらなかった人が必ずいると思います。
 それ、おかしいと思いませんでしたか。本来なら消費税額3%分だけ、原画料が上がるはずなのです。こういうあからさまな状態に遭遇することはめったにないと思う。そういうときくらい「消費税上がったから、ちょっとだけ原画料もあげてほしいのねん」と制作さんにお願いすることは、力関係がどうであれ、まったく問題はないと思いますよ。






2014年6月6日金曜日

「振り向き」という演技と動き

「振り向き」という演技と動き

 実写でもアニメーションでも「振り向き」は、頻繁に出てくる動きのひとつだ。

 重要な演技にかかわることも多い動きであるから、なにも考えずに「振り向かせればいいんでしょ」的な、そこにまったく演技が感じられない原画を上げてくるアニメーターは感心しない。上手くいくかどうかは時の運でもよいから、そこになにか「こんなふうに振り向かせようと思って描いたんです」という気持ちが伝わってくる原画は、たとえ失敗していても見ていて楽しいし、原画を描いたアニメーターがよい原画さんになる確率も高いと思う。

 ほかに作監していて困る「振り向き」原画は、作品の傾向を無視し、常に自分が描きやすい慣れたパターンで描いてくる原画ですね。「北斗の拳」で「ドラえもん」と同じふり向きを使うのはバツでしょう。
 このタイプの原画も、慣れたパターンを使って楽をしているだけであり、そこに演技を考えるというアニメーターの基本が抜けている。


 わたしが動画をしていたころ、劇画調の作品でダメな原画の見本として永久保存版にしたいような「振り向きの原画」が来たことがある。バストショットで原画2枚、中5枚、計7枚の振り向きである。
 1枚目の原画は棒立ちで真後ろを向いており、2枚目の原画はやはり棒立ちで正面を向いていた。したがって、動画としては、その間に5枚の中割を入れ、演技も動きも絵も完成させなければならない。
 社内とはいえ、手空き対策で入ったような仕事だったから、絵コンテも読んでいなければキャラクター設定も見ていない。どのような状況で振り向いているのか、横顔がどんなふうになるキャラクターなのかすべてがわからない。

 現在はキャラクターを重視するので、さすがにこのような振り向きで、横顔のアタリが入っていないことはないと思う。

 わけのわからない原画が来たとき動画は、「要するに動けばよい。好き勝手してかまわない」とわたしは思っていた。なぜなら、ほかに出来ることはないからだ。
 原画には描かなければならない必要最低限の絵がある。それが演技に深く関わることがない部分だとしても、原画が責任を持って原画なりアタリなりを入れなければ動画が困るという絵がある。
 この振り向き原画の場合でいうと、横向きの顔だ。

 それを描かなかった場合、結果がどうなろうと原画がとやかく言ってはならない。動かすことも演技させることも放棄して、自分が楽をすることだけを選んだ時点で、アニメーターとしてすでに「自分は一生誰からも尊敬されることのない、ダメダメなアニメーターで終わることに異議はとなえない」という契約書にサインしてしまっているからだ。


 原画を描き始めた頃、わたしは「振り向きっていう動きはかなりの頻度で出てくるナァ」ということに気づいた。そこで考えたのは「同じ振り向きは決して描かない」ということだった。
 同じ演技は二度とないはずであるから、絶対に毎回違う「振り向き」に挑戦すると決めた。パターンで動きを覚えることはしない。常にその状況に合う違う動きと演技を考えて原画を描いていけば、少しはアニメーターとして勉強になるのではないかと考えたわけだ。

 しかし5年がすぎる頃には、特にテレビシリーズにおいて、そうそう違うふり向きは描けないというところへ追い詰められた。したがってその後は、無理矢理違うふり向きを描くという課題はあきらめて、その時々ですなおに振り向きの演技を考えることにした。
 するととても楽になった(笑) 無茶な命題を自分に課すのは、いい加減なところでやめたほうがよさそうですね。


 そのようにいろいろな振り向きを描いてみた中で、印象に残っている実写の振り向きがふたつある。

 ひとつは「エイリアン2」の主人公リプリーが、武器を携帯し船内のエイリアンを探索中、物音に反応して振り向く芝居。リプリー役はシガニー・ウィーバーという女優さんだが、この方は非常に演技がうまい。エイリアンと戦う女性からコメディまで役柄も幅広く、この方ならおそらくどんな役でもこなすのだろうと思われる。


 そのリプリーの振り向きが素晴らしかった。
 強い恐怖心を抱いており、物音に過剰に反応する。だが、生き残るための戦いだから、振り向く動きは非常に速い。そのあたりのバランスが絶妙だった。
 どの程度の動き幅でどういった絵を描けばこの感じが出せるのか、コマ送りで繰り返し見た。


 もうひとつの印象的な振り向きは、「コマンドー」でのアーノルド・シュワルツェネッガーだ。シュワルツェネッガーが両手に武器を持ち、バストアップでこちらへ振り返るカットで、マッチョな男性に特徴的な動きを見せてくれる。

 たとえば私たちなら体より顔がかなり先行して振り向くだろう。しかし、シュワルツェネッガーはそうではなかった。もちろん顔が先行はするのだが、首が硬いため雰囲気としては顔が体ごとグリンと回るような振り向きを見せる。(ちなみにこの作品はターミネーターと違い、人間の役)

 この時の振り返り方は、シュワルツェネッガーの計算された演技によるものではなく、こういう体格の人が振り返ると、普通にそうなってしまうように思えた。
 つまり鋼のような筋肉を持つマッチョな大男を描くときは、そのようにしたほうが感じが出るということで、あまり関節を柔らかく動かすべきではないと、わたしは思ったのだった。

 
 そのキャラクターにピッタリという振り向きが描けたら嬉しいんだけどなー。