2014年9月15日月曜日

速く描くために、試してみたこと

●速く描くために、試してみたこと

 速く描くために、精神論や考え方は置いといて、誰でもできる具体的な手段を教えてほしいと言われたので教えます。
 でも、教えたからには実践してみて、結果を報告してほしいよね。よろしく(^^)

 本題に入る前に(前置きはいい! という意見もあろうが、本編の前には必ずキャッチが入るもの)、だから本題に入る前にね、アニメーターの仕事の中で1番速さを要求される職種はなんだと思う? 

 わたしは作監だと思うのね。
 原画の時は、自分の出来る量を積み重ねていくだから、ある程度、計算が成り立つ。しかし作監の場合、原画アップ日を守らなかった原画が最後にまとめて上げてくる原画を、なんとか直しきらなければならない。原画がアップ日を守らなかった分も含め、作監はアップ日を守らなければならない。

 そのようなときの作監が手を動かす速度は、アニメーターのどの職種より速いと思う。逆に言えば、作監職は手の速い人でなければ無理だと思う。
 原画を速く描く考え方については、先に述べたので、ここでは原画や作監時に、秒単位で時間を削っていく具体的な方法を紹介します。ただし、これはあくまで神村が考えた方法だ。人により、向き不向きはあるからね。

1)消しゴムを使わない。
 いきなり、「オイオイ」みたいなのが出てまいりましたね。
「描き間違ったとき、消しゴムなしでどうやって直すんだよ」と言っているそこのアナタ。わたしは「絶対に」とか「まったく」とは申していないざんす。「ま、なるべくなら」消しゴムは使わないほうがいいネ(^^) ってことでございます。
 消しゴムで消したり描いたり、また消したりしている時間が「ほぼゼロ」になったら時間節約になるでしょう? 速く描くなら、この描き方は身につけよう。1枚の下書きで10分の節約になるはず。

 アニメーターの下描きのしかたは、みんなだいたいいっしょだと思う。色鉛筆で流れや向きのアタリを取り、その上から実線で下描きをしていく。色鉛筆で流れやブロックをアタルのは、このとき実線でアタリを取ると下描き後にどの線を拾うのか不明確になるためですよね。最初に色鉛筆を使うというのは、誰かが考えた時間節約の手法だと思う。
 そのあとの実線で描いた線が、清書で拾う線になるということよね。このときの実線下描きを一発で決めなはれ、ってことよ。

 色鉛筆でいちどアタリを取っているのだから、ここで迷ったらだめ。神村的には、絶対の自信を持ってここは1本の線で決める。この時の自信に根拠などない。だが勢いはある。速く描くためには、時には根拠のない自信も必要だ。

 しかし、わたしたちの先輩はもっとすごくて、色鉛筆のアタリなど取らずに描いていた。下描きもしていない。いきなりきれいな線でキャラクターを描き出していく。そういうテクニックを持っていた。下描きなしだから速いですよ。目の前でサクサク原画が、あるいは修正が描かれていく。
 どうして下書きなしで描けるのかたずねたら、「最初から下書きなしで描く訓練をすればできるようになる」のだそうだ。
 しかし、この訓練をわたしはついにしなかった。画力が追いつかないと思った。

 階段を上っていくフルショットの女性を描くとき、大塚康生さんは次の段に乗せた足から原画を描き始め、だんだん上へと描いていき最後に顔を描くという方法を普通に使っていた。それももちろん下書きなしで一発原画です。当然、速かったです。

「アニメーターなら、どこからでも描けないとね」と、足から描き始めてキャラクターを完成させて見せてくれた人はほかにもいた。こういう描き方ができれば最高ですね。でもさすがにハードルが高いので、せめて消しゴムで直す必要のない下書きを描きましょー。

 わたしの場合、ほとんど消しゴムを使わないので、消しゴムが全然減らないうちに劣化してしまう。1年に一回取り替えるていどなので、鉛筆のオマケに付いてくる消しゴムが余ってしかたがない。

 シャーペン式の電動消しゴムっていうのもあるでしょう。以前人様から「便利だよ」って、もらったことがあるのですが、ついに一度も使わなかった。もらい物なので捨てるわけにもいかず・・・ジャマだった。ゴメン。


2)原画上がりを翌日見なおさない。
 またまたテキトーな仕事のしかたをしているように思える発言ですね。
 そうではないの。以前、「原画をたくさん上げるためにはリテイクを減らすべき」と述べました。それとなんら矛盾しないところで「原画上がりを、翌日になってまた見なおす」という行動を取るな、ということです。
 その日に描いた原画はその場で、抜けやミスがないかキッチリチェックします。そして、「よし!」となったら上がりの棚に乗せる。いったん「上がり」の棚に置いた原画上がりは、翌日になって「ちゃんと出来ているかなあ、おかしいところはないかなあ」と見なおしては、絶対にいけません。もう前日、制作さんが回収していったので手元にない、とでも考え、その存在を忘れる、あるいはあきらめて下さい。

 一晩おいて、上がり原画を見なおしたら最後、アニメーターの習性として「ここをもう少しどうにかしたほうが、いいかもしれない」と必ず気づいてしまうのです。そこで直し始めたら、原画はいつまでたっても上がらない。余計な時間がかかるだけだ。
 たとえ直したとしても、その翌日見れば、どうせさらに直したくなる。原画を速く上げるには、そのような無限ループにはまってはいけないのですよ。

「あきらめる」
 速く上げたければ、そういう考え方をして下さい。割り切るんですよ。

 まだ技術が追いつかない新人は除き、テレビシリーズ1カット=4000円の原画を、きっちり4000円ちょうどの労力で描くアニメーターはほとんどいないとわたしは思う。多くのアニメーターは、プロの絵描きとしての矜持または責任感から、4000円のカットに6000円以上の労力をつぎ込んで描いているはずだ。そうでなければよい原画は描けない。
 だったら、もういいじゃないですか。単価の150%分の仕事をしたのなら、それ以上はもう割り切っていいんじゃないか。そのようにわたしは考える。

 あきらかなミスに気づいたときは別だが、速く上げるために、原画上がりの見直しはしない。してはいけない。これで1カット当たり、1時間ていどの節約になる。

 とはいえ、速く描くことに重きを置かず、自分が納得できるまで直したいという原画さんも存在する。そのようなタイプは、おおむねよい原画を上げてくる。自分の描いた原画に、技術的こだわりがあるのだと思う。
 こういう人に「終わった原画は、もうあきらめて、割り切って出せ」と言っても通用しない。絶対に量は出来ないタイプだと思うが、絵描きとして見た場合、このようなこだわりは、それはそれで正しいのであり、そうすることでよい原画を上げているなら、立派なアニメーターだと思う。

 わたしがいま述べているのは、あくまで速く上げる方法なので、それがイコールよい絵描きというわけではないのですよ。割り切りをよしとしないアニメーターもいることは充分に理解している。
 また劇場用作品では、基本的に割り切りはできない。

 では次。


3)極力鉛筆を持ちかえない。
 鉛筆を持ちかえる時間さえ惜しむ描き方をせよ、ということね。ここまでくると、ある意味、極論に近いです。これで減らせる時間は、1枚当たり5分程度かもしれないが、速く描くということはそういう些細な節約の積み重ねなんだろうと思う。

 鉛筆を持ちかえないために、わたしはどんな作品も、どんな大きさの絵もHBで描きます。HBは絵を描くためには少し硬すぎる鉛筆だと思う。だが、硬いからこそガリガリ描いても鉛筆の減りが遅いです。つまり鉛筆を削る回数が少なくてすむ。
 HBが硬いことの難点は、腕にかける負担が大きいこと。腱鞘炎に弱いタイプのアニメーターには、HBでガリガリという描き方は向いていない。

 また太めの線でタッチを重視する作品にも向いていない。わたしはそのような作品でも、芯を太めにして力を入れることで、HBから持ちかえることなく対応する。
 すばらしい絵をお描きになるある巨匠は、絵の大きさによって、3BからHBまでの鉛筆を持ちかえていた。
 巨匠の作監修正作業を後ろからのぞき込みつつ
「絵の大きさで、鉛筆を使い分けてお描きになるのですね」
 と、わたしが言ったところ、巨匠は手を止め振り返った。
「神村さんもそうするでしょう?」
「いえ、わたしはなんでもHBで」
「・・・・・」

 巨匠の視線はちょっと冷たかったですね(^^;) 
 そりゃあ、巨匠、あなたは下書きなしで修正していくのですから速いでしょうが、わたしにはそういうまねは出来ないので、なんでもHBというのはわたしなりの時間節約方法なのですよ。・・と言いたかったが、時間節約のために絵の表現を殺すことなど邪道と思われている節のあるその巨匠にはいえませんでしたわ、はい。

 また、RETAS が導入されてからしばらくは、なんでも細い均一の線で動画することになっていたから、たとえ劇画タッチ作品のアップショットでも、原画のタッチは殺されてしまう。すなわち、太い線で原画を描くと、動画クリーンアップ時に、太い線幅から細い1本線を動画さんが選択していかなければならない。
 それならば、最初から裁量の余地ない細い線で原画を描いた方がよいではないか、と考えたのもHBに一本化の理由のひとつだった。


4)色鉛筆の代わりにサインペンを使う。
 色トレスでの影、ハイライトがやたら多い作品の場合、わたしは色トレス線を引くのにサインペンを使っていた。単純に時間を節約するためにサインペンを選んだだけである。
 サインペンの利点は、色鉛筆に比べ線を引く時速が3倍。そして削る必要がまったくない、ということだ。不利な点は、わたしとしてはない。
 しかし、見た人は「サインペンだと間違ったとき消せないでしょう?」と心配していた。
 間違わないからいいんです! ではなく(^^)間違ったときは、あきらめて「×バツ」をつけて消していたのコト。どうせ色鉛筆だって、けっこう消せないのだからそう変わりはない。速さのためには、どこかである程度の割り切りは必要ですよ。
 これで1枚10分節約出来る。これは大きいですよ。とくに作監作業のときにね。

 そしてアニメーターはわかっていると思うけれど、硬質色鉛筆は腕に負担をかけますね。でもサインペンはまったく力を入れなくても描けるのだ。速いよっ!

 とはいえサインペンを使用するというのは、追いつめられてしたことだから、ふだんここまでする必要はあまりないとは思うけれどね。


 すこしは参考になりましたかね。
 それぞれの人に向いた時間節約方法が見つかるといいですねっ。
がんばってみて\(^ ^)/







1 件のコメント:

  1. 今個人制作でアニメを作っている者ですがとても参考になりました。
    試しに消しゴムを使う回数を極力減らしたら原画一枚30分かかっていたのが
    15分程度まで短縮出来たので驚きでした!

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