2014年2月1日土曜日

アニメはなぜ学長賞を取れないか

神戸芸術工科大学 映像表現学科 アニメコース 畑島さん、富坂さん、清水さんへ

 卒業制作の「From Amco」は本当によくがんばりました。3人をギュッとしてナデナデしてあげたいくらいです。芸工大アニメ史上最高の作品です(歴史が短いもので)。

 神村も、アニメコース副査の先生も当然、映像表現学科第1位の学長賞に推しました。しかし多数決で映画に負けました。映画も秀作でしたのでここは拍手を送りたいと思います。とはいえ、やはりアニメーターとしてわたしは、技術と内容において「From Amco」が負けていると思っているわけではないのです。
「From Amco」が学長賞をとれなければ、アニメが学長賞をとることはほぼ永久にむずかしいとわたしは考えます。アニメコースの作画2トップと仕上げのトップが3人がかりで全力で作った作品です。これだけのメンバーがそろうことは今後もそうそう期待できないでしょう。


 では、なぜ「From Amco」が学長賞を取れないかといえば、それにはアニメであるという理由が第一にあげられると思います。審査の過程を見ながらずっと考えていたのですが、アニメは尺も短いため、絵描きである学生にとって、計算されたシナリオというものは現時点ではなかなかむずかしいと思います。
 アニメコース副査の先生のように監督でもあり脚本家としての仕事もしているアニメーターは別ですが、そこまでのキャリアを積むには長い時間がかかります。
 さらにキャラクターの動きを絵にすることにほとんどの労力を注ぐため、作品全体としての出来がわかりづらいこともあげられます。

 映画はしっかりしたシナリオで、長尺ものをプロの俳優を使って作った場合、作り手の思いを観客にきちんと伝えることが可能です。しかし、アニメでは1コマ1コマ絵を描いていくために、正しく動かそうとするだけでたいへんな労力と高い技術を要求されます。

「From Amco」はアイドルのダンスシーンが多い作品です。ダンスはアニメーターにとって、とくに技術を要求されるむずかしい動きです。神村もスポッティングシートに合わせて作るOP・EDやダンスシーンを、おそらくほかのアニメーターより多く担当し原画にしてきましたが、ワルツはまだしも、速いダンスシーンは動きを描く難しさで群を抜いています。

 まずポイントとなる絵=原画枚数を非常に多く必要とすること。神村の経験では、ダンスシーンは2K中1ていどの原画を描くことになります。また、こちらは絵描きでダンサーではありませんので、ダンスを描くときはプロダンサーのじっさいのダンスをそのまま描き写すしかないのがプロクォリティ画面を作る場合の当然性です。

 わたしたちプロのアニメーターは、実写をみて物理的に不自然な動きに気づく観察力を長い訓練によって身につけています。
 たとえば忍者が高所へ飛び上がる例をあげますと、実写ではつり上げた上でCG処理を施すか、ヒーロー戦隊ものテレビなど、あまり時間と予算に余裕のないものは逆撮を用いています。ヒーローの衣装はわりあいフォロースルーする部分がないデザインが多いのでアクション俳優が練習すれば違和感がありません。

 それでもアニメーターが逆撮を見ると筋肉の使い方や体それぞれの部分の動き順など、細かいところでその動きが物理法則に合わないものであることに気づきます。
「宇宙刑事ギャバン」あたりから戦隊ものを数多く見て、ギャバンでは原画の勉強のためにアクション部分でコマ送りを繰り返したので、わたしはそのあたりはわりとよく気づく方だと思います。
 昨今のフルCGファンタジー映画のように髪の毛1本まで物理法則にそって作られたものは「CGだ」ということしかわかりませんが。


 そのプロアニメーターの観察力をもってしても、ダンスは実写をノーマルスピードで何度見ても、必要な原画ポイントがわかりません。とくに速いダンスの場合にそれが顕著です。「From Amco」も速いダンスの部類です。

 大まかにどのような振り付けであるかはわかるのですが、ダンサーがその動きにキレを出すため、あるいは動きをより速く大きく美しく表現するのに必要とするわずかな予備動作は「なにか動いている」ことまでは見えますが、次の動きに行く前にいったいどのようなタイミングで、どれほどの幅の動きを、どういった角度で付けているのかは、コマ送りしないと明確に絵にすることはできません。

 なにしろ技術の高いダンサーになればなるほど、身体のすべての部分をすべて別のタイミングで動かすということを、おそらく考える以前に天性のようにやってのけるからです。だからこそ高度なダンスは息をのむほど美しい。(広義ではバレエなど、すべての舞踊が含まれると思います)

 人間の身体で極限までの美しさを表現するテクニックを持つのがダンサーという人たちだと思います。

 極度にむずかしいそのダンスに、あなたたち3人は挑戦しました。卒制主査の神村としては、ほかの班であればダンス主体のストーリーはおそらく認めずに、ほかの題材を勧めたと思います。しかしあなたたちには挑戦してみてもらう価値があると思いました。
 これはわたしの推測ですが、それは副査もおなじ考えだったでしょう。副査も脚本家であり、監督であり、キャラクターデザイナーであり、その前に優秀な作画監督なのですから、あなたたちが描いたダンスを見てみたいと思ったのではないでしょうか。

 神村と副査は、あなたたちに、ダンスはスポッティングシートを取らなければできないことや、目に見えない予備動作を入れなければならないことなど、本当に初歩的はことは教えましたが、じっさいに上がってきた原画はよほどのことがないかぎり直すことはしませんでした。なおしたとしても50枚の原画の中に1枚ラフを加えて説明する程度の直しです。
 それは卒制があなたたち自身の力で作るものだからです。あなたたちが、自身の現在の力量をもって研究していくものが卒業制作であり卒業研究だからです。

 画面で見ると、予想とちがったところがたくさんあったと思います。しかし、うまくいかない部分があったとしても、あなたたちが描いたダンスシーンの原画は、学生としては最高水準の出来でした。画面ではそこまでには見えませんが、原画を見るとわかります。
 そこまでがんばった原画は、わたしたちプロである教員が直すべきではないでしょう。そのままテレビで使って問題ない出来のカットもありました。
 3人でほんとうによくがんばりました。動きに多少問題があったとしても、胸をはってよい作品です。

 アニメコースはいままで2位である学科賞までは推薦したことがありますが、1位である学長賞に値する作品はできていないという理由で、コースとして学長賞にアニメ作品を推薦したことはありませんでした。
 推薦に値する作品が現れるのを8年間待っていたのです。そうしてようやく現れた学長賞候補が「From Amco」でした。

 そこまで待ち、満を持して学長賞候補に推薦した「From Amco」がなぜ学長賞を取れないかといえば、手描きアニメーションの技術がむずかしすぎて、自身がそれなりの技術を持つプロの手描きアニメーターでなければ、作品の水準がわかりづらいという一点につきるのではないかというのが神村の結論です。

 お疲れ様。ナデナデ(^^)/







1 件のコメント:

  1. From Amcoみました。いいですねーこれ。ダンスの動きはとてもうまいしかわいいし、物語もセリフなしで紡がれていてすごくいいです。商用アニメもみならうべきです(笑) ト書きだけの脚本が絵になって動き出す時の喜びは、アニメーターが得られる最高のご褒美じゃないでしょうか。浅田真央賞をあげましょう!

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